耳から鍛える

音楽表現力を上げるとはどういう事でしょうか。表現という単語をテクニックに入れてしまうと「音楽はテクニックじゃない」という話にも繋がってしまうかな?と思ったので、音楽表現力を「テクニック」カテゴリに入れるべきかどうか迷ったのですが、やはりここは敢えて「テクニック」に入れておく事にしました。

音楽表現というと、なんだか感情を出せば良い、感情を込めれば良い・・と思うかもしれません。が、そんな「感情」「感性」にも色んな表現方法があります。「感情」や「感性」というのは、言葉で言う所の「言いたい事」に当たると思っています。

言いたい事がある。これが第一。

そして次に、そんな「言いたい事」を上手に伝える力、これが音楽表現力だと思います。これは、私は語学力で言う所の語彙力、文法力かなと思っています。私が最も得意な言語は日本語です。日本語だと、この言葉にしようか、この語順にしようか・・などと選べますし、選ぶことで、歯切れ良い文章にしたり、余韻を残す文章にしたり、説得力を上げる文章にしたりすることが出来るわけです。フランス語では日本語程そのような事が出来ませんし、英語に至っては基本文法に従え状態です。つまり表現力とは、伝える上で非常に重要なテクニックなのです。

さてさて実際は音楽を表現する際には、今まで上げて来た技術、タンギング、音、呼吸などを全部駆使します。これらは自分の体の駆使ですが、音楽表現力はここに自分の「感性」の駆使が入ってくると思います。テクニックの総合体とでも言いましょうか。


ではどうやってその「感性の駆使力」を上げるか、という話になります。そしてそのためにはやはりまずは「感性を磨く」事です。そして「感性を磨く」為にはどうするかということになり、そこで私は、まずは聞く事だと思います。音楽は耳で聞くものですから、まずは耳を肥えさせるということです。



日本の伝統音楽は口承伝統で、ひたすらに師匠を真似る事から学ぶと言われていて、そもそも学ぶという言葉と真似るという言葉の語源は同じとも言われています(語源由来辞典より)
なんていうと、「そしたら個性はどうなるの?」という話になると思うのですが、個人的には個性というものはどんなに真似てもにじみ出てくるものだと思っています。学ぶは真似るですが、真似るも学ぶなので、ただの猿真似ではなくて、真似ながら学ばなくてはならないわけです。形をソックリ真似るというのは実は大変で、多分真似る段階で、自分との違いが浮上してくるでしょうし、その違いを分析して、「もっとこうしてみよう」という発見があることでしょう。或は「自然と身に付いた」という事もあるかもしれません。

先生から言われた事をそのままする、とはちょっと違います。先生から言われた事は言われた事であって、自分で聞いていません。自分で消化してないから、ちょっと違う。真似るという行為は受け身なようで、実はすごく能動的な学び方法だと思います。

最近面白い話を聞きました。知人の所に来る生徒さんらが口々に、
「昔、昔習っていたピアノの先生がバッハは練習曲みたいでつまらないって言ってた」
と言うと言うのです。練習曲=つまらない という発言さえもどうなのかな、と思います。後々エチュード・曲の練習方法の中で御伝えして行きたいですが、エチュードにも沢山の音楽的面白さが隠されています。本人の姿勢次第です。
ましてバッハです。バッハよりもドビュッシーの方が好きだという個人的見解はともかく、バッハから音楽を見いだせないとは教育者としてなんとも悲しい限り。そして思ったのです。この先生方は、バッハを実は聴いた事ないんじゃないかしら?と。或は同じような考えを持った人のバッハしか聴いた事が無いとか。(音大生・音楽家だからといって、音楽を沢山聴いているとは限りません(悲しいですが、それも現実))

バロック時代の音楽を”シッカリ・カッチリ”というのは何故か日本の教育内であるようですが、あの頃の音楽はダンス(舞踏)と結びついているものも多く、動きがあるのです。音の動き、舞、そんなのも理屈ではなくて、聞いてみないと分かりません。和声の変化が大きく音色、空間に影響してきます(これは西洋音楽全般に言えますが)。それらが耳の感覚に結びついていないと、バッハの整然とした音の並びは”練習曲みたいでツマラナイ”に繋がるのかな??と思いました。

音楽は吹くのも楽しいけれど、沢山聴いてみてください。流し聴きあり、積極的に聴きあり。


J.Sバッハ/C.P.E.バッハ:フルート協奏曲 /ソナタ(クイケン演奏//バロックフルート)



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